「…言うな」

ディセルが、セレイアの声を遮る。ディセルは今にも泣き出しそうな、辛そうな表情をしていた。

それでも、セレイアは言わなければならなかった。

「私は―――」

「言わないで…お願いだ」

懇願され、再び強く抱き寄せられて、セレイアは言葉を失いそうになる。

涙で視界が滲んで、何も見えない。

月も、空も、森も。

ただディセルのぬくもりだけが、自分のそばに存在している。

(ごめんねディセル)

詰まるような息苦しさを感じる喉から、セレイアは声を押し出した。

「私は、ヴァルクスが好きよ…ヴァルクスしかいないの。
だから私は…あなたの気持ちには、応えられない……」

そう告げた瞬間から、いよいよ涙が止まらなくなった。

引き裂かれるように胸が痛むのはなぜなのだろう。

「………わかってる。
わかってるんだ、いやというほど」

ディセルの声まで涙声で、それがセレイアの胸を衝いた。

二人は、抱き合いながら、声を押し殺して泣いた。

互いのぬくもりを、心地よいと思う心さえ、押し殺して泣いたのだった。