麗雪神話~幻の水辺の告白~

そのまま力いっぱい抱きしめられ、セレイアは困惑した。

互いにずぶ濡れの体なのに、触れた場所が熱く感じる。

「ディセル…?」

彼の腕の中のセレイアからは、ディセルの顔は見えない。

けれど耳元で響いた「セレイア」という声音で、彼がどんな表情をしているのか、わかってしまう。

きっととても悲しげな顔をしているのだろう。

でも、何が彼を悲しませているのか、わからない。

「ディセル…?」

もう一度、彼の名を呼びかけると、彼は絞り出すような声音で言った。

「プミラに頼んで、匂いで探してもらってよかった…君が無事でよかった…」

心優しい彼を、心配させてしまった。

それは素直に申し訳ないと、セレイアは思った。

「ごめんなさい。でも私、花を探さないと…。だから、はなして?」

セレイアは力を込めてディセルから体をはなそうとしたが、びくともしない。

むしろ、より強い力がディセルの腕にこめられたようで、セレイアはひたすら困惑した。

「いやだ、はなしたくない」

耳元で低く囁かれ、セレイアはどきりとした。

鼓動が早鐘を打ち始める。

それと同時に、胸に痛みが走り、頭のどこかで警鐘が鳴る。

―だめだ。これ以上触れてはいけない。