麗雪神話~幻の水辺の告白~

その時。

セレイアの腰に、力強い誰かの手がまわされた。

そして水面に、力強く引きずりあげられる。

強い力によって、足に絡まっていた水草は引きちぎられた。

セレイアは水面から顔が出た瞬間、反射的に、ぷはっと空気を吸った。

助かったのだ。

しかしいったい、何が起こったのだろう。

セレイアは腰に回された腕の持ち主を見上げた。

そこには、辛そうに顔を歪めたディセルがいた。

「なに…やってるの! バカ!」

彼にしては珍しい罵倒。

けれど反論する気は起こらない。自分でも、バカだと思ったから。

それでも。それでも。セレイアの胸から想いが溢れた。

「花を……幻の花を、探さないと…あれがあれば、死者に会えるかもしれない…一目でいいから、私……」

か細いセレイアの訴えを耳にし、至近距離のディセルの瞳が、驚愕に見開かれる。

「死者に会える、花…? セレイア、まさか……」

「私、花を探さないと…」

ディセルの腕から逃れ、再びセレイアは向こう岸へ泳ごうとする。

しかし、ディセルの力強い腕が再びセレイアをとらえ、果たせなかった。