どれほどそうして道なきジャングルを進んだだろう。

不意にセレイアの鼻が、水の匂いを感じ取った。

(この近くに水場があるんだわ)

セレイアの胸がはやった。

草をかき分ける手ももどかしく、服は破け傷だらけになりながら、セレイアは駆ける。

そして月明かりに幻想的に浮かぶ、小さな水辺にたどり着いた。

ちょうど木々の開けたところにあるその水辺は、静かな水面に鏡のように月を映して、この世のものとは思えぬ神聖な空気を持っていた。

トリステアの神殿の空気に似ている。

(アプロマイトは…!?)

セレイアは視線を走らせたが、暗いためにあまりよく見えない。

―なんとしてもアプロマイトを探さねば。

セレイアはじゃぶじゃぶと、服が濡れるのも構わず水の中に入っていった。

体中の擦り傷に水が沁みて痛い。

けれどそんなことには構っていられなかった。

小さく見えて、水はかなりの深さがあった。あっというまに胸元まで、水の中に沈んでしまう。

熱帯に近い気候とはいえ、水は冷たく肌を刺す。

それでも一歩一歩進んでいくと、水はいよいよ深さを増し、セレイアの首もとまで迫ってきた。