「今日はこのあたりで野宿にしましょう」

はるか彼方、連なる山々に西日が落ちていく頃、セレイアは仲間たちにそう提案した。

皆口々に賛成し、役割分担をして別れていく。

セレイアは調理係、ディセルは寝床づくり係、サラマスは薪拾い係、シルフェは川から水を汲んでくる係に決まった。

仲間たち―ディセル、サラマス、シルフェ。

この三人は、いずれも人間ではない。

この人間界の隣に存在すると言われている天上界に住む神の、人間界へとおりてきた姿なのだ。

ゆえにそれぞれ特徴はあるものの、皆たいへん優美な、この世の者とも思えぬ整った容姿をしている。

そんな彼らと、ただの人間の娘であるセレイアが共に旅をすることになったのには、事情がある。端的に言えば彼らを天上界へと帰すため。そして、飛天の能力者と呼ばれる特別な人間を捜すためだった。

サティエイト王国でシルフェと出会った一行は、天上界へと帰る方法を彼女から教わり、それにのっとって、南のエイフォーティク帝国をめざして、旅を続けていた。

薪を拾って来たサラマスが、集めた薪を器用に積んでいく。

そして何の火種もなく、それに火をつけた。

これが、神々の能力。

自らの属する自然界のものを自在に操ることができるのだ。

炎の神サラマスは、いつでもどこでも炎を生み出せるばかりか、マグマに落ちてもやけど一つ負わない。