初恋の甘い仕上げ方





私が翔平君に、不安のすべてを捨てて飛び込みたいけれどできないのには理由がある。

「兄さんが、翔平君は結婚するって言ってたけど、それってどういうこと?」

心にひっかかっていたことを、ようやく口にして、翔平君を見ると。

一瞬顔を歪めて「樹、ホント面倒だよなあいつ」とぶつぶつ言っている。

私の肩に置かれた手に力が入り、翔平君の声も大きくなった。

「たしか、長い間好きな女と結婚するって樹に言ったけど、酔っぱらっていたあいつは俺が誰と結婚するかなんて聞かずに勝手に盛りあがったんだよ」

「え?盛り上がって?」

「そう。とうとう萌の失恋も確定だって言って泣き出すし。でも俺が幸せになるなら応援するって店で叫んで大変だった」

翔平君はそのときのことを思い出したのか、面白くなさそうなため息をついた。

翔平君が結婚すると兄さんから聞いたとき、たしかに兄さんは酔っていたけれど、そのせいで大きな勘違いをしていたってことなのだろうか。

それは間違い? でも、結婚すると、今も言っていたけれど。

「じゃ、誰と……?」

兄さんが聞かないままだったという翔平君の結婚相手は誰なんだろう。

今日、翔平君がずっと私を甘い言葉で混乱させて、そして自分は私のものだと言い続けているのだから、期待、しそうになる。

その相手はもしかしたら、私なのだろうかと。

「期待しちゃいそう」

今日伝えられた翔平君の気持ちを、まだ信じ切ることができないのか、結婚相手が私であればいいけれど、そうではないのかもしれないと。

長すぎる片思いの後遺症で、自信が持てない。

けれど、それを見透かす翔平君の瞳が、私を責めているような気がする。

もっと自信を持てと、そう言って叱っているような、厳しい目。

けれど、そこにはたしかに愛情も感じられて。