「翔平」
こうして抱きしめられている自信によるものなのか、これまでずっと言いたくてたまらなかった言葉も口を突いて出る。
「翔平……」
「ああ。大丈夫、これ以上のことは今日はしないから」
私の声に心細さを感じたのか、翔平君は視線を上げ、ゆっくりと笑顔を見せた。
息が上がっているのは翔平君だけではなく、私も同じ。
その吐息を混じり合わせるように自然と寄り添い、唇を重ねた。
慣れないキスなのに、翔平君の動きにしなやかに従い目を閉じる。
そして、何度もキスを繰り返したあと、ほっと息をついて、顔を見合わせた。
すると、翔平君は私の耳元に指を差し入れ髪を梳くと、くくっと声をあげ笑った。
「顔が、赤いな。気持ち良かったって顔してる」
「な、そんなことっ」
「そんなことないなんて言わせない。それとも、俺ひとりが萌とのキスを楽しんでいたのか?」
「それは……違う……」
からかうように私の顔を覗き込んだ翔平君と目を合わせるのが、恥ずかしい。
「今日は、これだけで我慢しておけ」
「は?」
「そんなに物欲しげな顔をして俺を煽っても、今日はここまで。うぶでかわいい萌ちゃんは、キャパいっぱいで壊れそうだしな」
翔平君は額と額を合わせると、焦らすような笑みを浮かべた。
まとわりつく私を面白がっていた、出会った頃の翔平君を思い出すその表情を見せられると、私の頬も緩んでしまう。
翔平君と一緒にいると楽しくて仕方がなくて、子どもながらに身なりを気にしては鏡の前に立つ時間がどんどん増えていたあの頃。

