それでも翔平君は私との距離を取ろうとせず、その腕で私を抱きしめたままだ。
すると、翔平君の唇が私の耳たぶを甘噛みした。
「や……、しょうへい、く、ん。やめて……」
そっと顔をそむけ、翔平君の唇から逃げようとしても、力が抜けている体にできることなんて限られていて、すぐに熱い唇に追いかけられる。
耳から首筋をたどり、鎖骨あたりで何度も痛みを落とす翔平君に、私は抵抗できず、ただ受け入れることしかできない。
未だ経験したことのない感覚と恥ずかしさに、声があがりそうになるのを必死でこらえた。
「我慢するな。感じてるだろ? なあ、初めてか?」
「な、なに……」
「オトコと付き合ったことあったよな。俺以外のオトコと」
鼓動が激しく、荒い息を我慢できない私に反して、落ち着いた声で翔平君が聞いてきた。
翔平君以外のオトコ。
たしかに付き合ったことはあったけど、体を重ねることはもちろん、キスだってできなかった。
翔平君を忘れたくて付き合い始めたというのに、翔平君への気持ちを確認しただけで、相手の男性には申し訳ない思いばかりが残っている。
好きになれると思って付き合い始めたというのに、そんなこと無理だった。
「私、どうしても、できなくて」
「できなかった?」
「うん。翔平君が、好きすぎてどうしようもなくて。ハタチを過ぎたいい大人が、翔平君以外の人とはできなくて情けなくて」
唯一付き合ったことのある男性への申し訳なさと、報われない翔平君への想いに涙した日の感情を思い出し、目の奥が熱くなった。
すると、翔平君の唇が私の目じりをそっと撫でた。
「できなかったって、これか?」
「え?」
ぼんやりと、視線を動かせば、翔平君の力強い視線とぶつかった。
そして、あっという間に翔平君の唇が私の唇に触れていた。

