「人見知りで泣き虫。樹の後ろでこわごわとあたりを見回していた小学生が、いつの間にか俺を見上げてはにかんでた。俺が笑えば顔を真っ赤にして笑い返して、俺が冷たくすれば……まあ、そんなことこれまであまりなかったけど、俺が優しくしないと唇をかみしめて涙をこらえるし」
「そ、それは大げさでしょ……。私、顔にそれほど感情は出ないと思うけど」
肩を揺らして笑い声をあげる翔平君に慌てて反論する。
「たしかに、私は、翔平君が……」
好き。
コンビニの前で言いそびれた言葉を今ここで言ってもいいのだろうか。
さっき翔平君は私が翔平君のことを好きだと自信に満ちた態度で言っていた。
小さな頃から私に見せていた強気な口ぶりは健在だけど、それでもどこか何かを探るような落ち着きのない様子も見え隠れしている。
「で、その続きは? 俺だけが萌を喜ばせる言葉を言うのはおかしいだろ?」
私の次の言葉を催促するように、翔平君の唇が私の頬を滑る。
視線だけは私の目から離さず、何度も頬を撫でるように。
私の体はぴくりと反応し、思わずあとずさってしまったけれど、腰に置かれた翔平君の手がそれを許さない。
離れた距離以上に引き寄せられ、ほとんど抱きしめられたような距離感で私の言葉を待っている。
「萌」
私の名前をつぶやいた唇が、私の唇の端を這う。
唇に触れそうで触れない微妙な刺激に、足元からくずおれそうになる。
力が抜けかけた私の体は翔平君に支えられ、その反動で私は翔平君を見上げた。
相変わらず私の頬に感じる翔平君の唇の熱に「あ……っ」と小さな声をあげて恥ずかしくなる。

