そして、カウンターの端に飾っているフォトフレームを手に取った。

白い枠にパールの飾りがいくつか輝いているフレームには、私と翔平君のご両親が笑顔で並ぶ写真が納まっている。

先週、引っ越し祝いにといろいろ持って訪ねてきてくれたときに撮ったものだ。

ふたりは今も変わらず忙しく、その日も撮影の合間をぬって時間を合わせて来てくれた。

『このソファで翔平といちゃいちゃしてもいいのよー。いつ萌ちゃんが翔平のお嫁さんになってくれるのかって楽しみにしてるんだから。でき婚、ううん、今は授かり婚って言うのよね、私はそうなってもOKだからね〜』

明るくそう言って、さっきまで翔平君が座っていたベージュの二人掛けのソファをプレゼントしてくれた。

それにしても、“授かり婚”と言われたとき、それを期待してしまう自分にドキリとしたことは翔平君には絶対秘密だ。

そして、事前になんの連絡もなく突然運び込まれたソファにはかなり驚いたけれど、そのソファには見覚えがあってさらに驚いた。

翔平君のお母さんである美乃里さんが去年出演した映画の試写会に招待されたとき、映画の中で使われていたソファが気になってどこのソファなのかと聞いたことがあった。