「こないだ会ったときにもこのあたりの新商品全部を買っていたよな。うまかったか?」

「あ……まだ、食べてない」

「へえ。あれだけ買っていたからよっぽどチョコレートを食べたいんだろうって思ってたんだけどな」

「あ……あれは」

たしかにこの冬の新製品ばかりを一気に買い込んだけれど、それは全部翔平君がパッケージのデザインをしたものだからだ。

「リボン」

「あ?」

ぽつりとつぶやいた私に、翔平君が首をかしげる。

「あのチョコのパッケージに描かれているリボンって、私が気に入って……」

「あ、気づいたか? そうだ、俺が昔萌にプレゼントしたリボンを思い出しながら描いたんだ」

「やっぱり。一目で気づいたよ」

「だろうな。萌はあのリボンをかなり気に入ってたもんな」

「うん。今もちゃんと大切にしてるし、引っ越しのときにも持ってきた」

これもまた翔平君からプレゼントしてもらった、綺麗なビーズがちりばめられたキラキラとした宝石箱にしまってある。

そういえば、あの宝石箱の中身って翔平君からプレゼントされたものばかりだ。

中学に入学するときに「ちょっと贅沢仕様だけど」ともったいぶりながらプレゼントしてくれた腕時計は、茶色い皮ベルトが擦り切れても電池切れで動かなくなってもそのたび時計屋さんで復活させてもらった大切なもの。

中学高校六年間の私の時間は、すべてあの腕時計とともにあった。

大学に入って、翔平君が新しい時計をプレゼントしてくれたと同時にあの宝石箱にしまったけれど、今でも時々取り出してはちゃんと手入れをしている。

もちろん今も針は動いている。

「ふーん。じゃ、あとで見せてよ。俺の中で萌の小学校の頃の記憶にはいつもあのリボンがあるんだよな」

「うん。いつもつけてたね。でも……」

嫌な記憶がよみがえって、思わず俯いた。

あのリボンは大切にしまってあるとはいっても、今ではその色は元の色を思い出せないほど変わっている。