私の家の近くのコンビニに着いたときには、私は心の揺れに疲れ、足元も危うかった。

そんな私の腕をとり、迷いもなくコンビニに入る翔平君は何故か楽しげだ。

タクシーの中でも私を抱き寄せたまま離すことはなかった。

バックミラー越しに運転手さんと目が合う度恥ずかしくて仕方がなくて。

顔を隠すように翔平君の胸に顔を埋めると、頭上から聞こえたのは満足そうな笑い声。

そして私を抱く手にも力が入り、さらに私は翔平君から離れられなくなっていた。

その余韻は私の中に熱となって残り、体中がうずくように感じる。

必要なものを次々とかごに放り込む翔平君は「とりあえず今日の分だけでいいか」とつぶやいている。

本当に私の家に泊まるつもりなんだろうかという疑問は、かごの中身をみれば明らかだ。

缶ビールを手にした翔平君は、「萌は何本?」と視線を向けて聞いてきた。

家でアルコールを飲む習慣がない私は何度か首を横に振り断った。

すると、翔平君は迷うことなく近くの棚から私の好きなグレープフルーツジュースを手に取った。

それも、いくつかある中でも私が一番気に入っている銘柄だ。

そのことに驚く私を見て意味ありげに笑うと、「小さい頃から変わってないな」と言ってお菓子売り場に移動した。

そして、驚く私を無視したまま次々とチョコレートを手に取り、かごに入れていく。