初恋の甘い仕上げ方





翔平君が怪我をしたあの事故以来、ふたりのことが話題になることはなかったけれど、最近よりを戻したのだろうか。

この五年でデザイナーとしての評価が高まった翔平君に負けないくらい、三崎紗和さんも演技派女優として確固たるポジションを確立した。

モデルから女優に転身する人は多いけれど、成功する人は一握り。

三崎紗和さんは、その一握りの中に自分の居場所を見つけ、初めての主演映画の撮影がもうすぐ始まると聞いている。

ドラマや映画で彼女を見る機会は多く、翔平君の恋人だったという特別な思いを抱きつつも、彼女の演技力や存在感は認めるしかなかった。

そして、美男美女でありそれぞれの世界で実力を発揮しているふたりが並べば、私は遠くから眺めることしかできない。

近寄ることも、声をかけることもできない。

そんなときの翔平君の表情は穏やかで、三崎紗和さんを大切に思う気持ちが溢れている。

本当、つらいな。

翔平君から本気で離れようとしたあの五年前も、そのきっかけは三崎紗和さんだった。

そして今もまた……。

「だめだめ。とにかく仕事を頑張って、ローンの返済を頑張らなきゃ」

たとえ私を愛してくれなくても、翔平君が笑っていてくれればそれでいいのだからと、何度も自分に言い聞かせた言葉をまた、繰り返す。

そして、落ち込む気持ちを明るい声で無理矢理隠して、私は何度も深呼吸を繰り返した。