けれど、それで良かったのかもしれない。
たとえ小さな頃からの長いつきあいだとしても、翔平君のような有名人と、才能のなさを努力だけで補い、どうにか同じ業界で仕事をしている私が特別な関係になれるわけがない。
同じ業界で働いていれば、嫌でも彼の仕事ぶりを耳にする。
国内屈指の高級ホテルである『アマザンホテル』のロビーが改装されることになり、デザイナーとして指名されたのが翔平君だった。
それまで幾つもの大きな仕事を手がけていたけれど、アマザンホテルの仕事は彼の評判をさらに上げた。
サーモンピンクをテーマカラーとしたロビーは大きな窓から光がたくさん降り注ぎ、毛足の短いカーペットの模様や天井に描かれた絵、そして館内で使用される備品のすべて。
翔平君がトータルでデザインした。
そのデザインの中でもホテルに入っている有名なフレンチレストランで使用されているテーブルクロスはかなり人気がある。
宿泊客限定で販売されているということで、テーブルクロスが欲しくて泊まるお客様は多いと聞く。
そのお店には、私の誕生日に兄さんが連れて行ってくれたけれど、とにかく夜景が綺麗な店内に圧倒されてしまった。
お料理も申し分なく、もちろんテーブルクロスもしっかりと確認してきた。
サーモンピンクとオフホワイトが重なり合うテーブルクロスは優しい雰囲気を作り出していて、それだけでほっとできる空間だった。

