初恋の甘い仕上げ方





……だめだ、重症だ。

翔平君の背中に腕を回したい衝動をどうにか抑えて小さく首を振った。

気持ちを切り替えるようにまばたきを繰り返し、思い切るように顔を上げた。

すると、見慣れているはずの翔平君の整った顔が、まるで翔平君ではなくて、初めて会う男性のような表情で私を見下ろしていた。

「あ……えっとね。私、恋人とはもう別れていて会うこともなくて。それに、家を買ったこととそれは関係ないし……」

翔平君から向けられた不機嫌な表情に耐えきれなくて、視線を逸らしてそう言った。

深夜の曲がり角で向かい合いながら、翔平君の怒りをまともに受けている理由もわからない。

「翔平君? えっと……。もう遅いしさっさと帰りたいんだけど」

恐る恐る見上げながらつぶやいたけれど、腕の痛みは相変わらずで、翔平君の固い表情も消えていない。

「樹はこのマンションに萌が住んでることを、知ってるのか?」

じっと私の瞳を見ながら、探るような視線を向けてくる翔平君。

そんな翔平君の様子に違和感を感じる。