桃翔を抱っこしたまま、そっと玄関を開けて廊下の向こう側を見る。 エレベーターが開く音が聞こえたかと思うと、小走りに駆け寄ってくる翔平君の姿が見えた。 私に気付いて照れくさそうに笑うその顔と、腕の中ですやすや眠る愛しい息子の寝顔を交互に見ながら、この時間がずっと続けばいいのにと願う。 そして、気づくのだ。 切ない初恋が実れば、桃より甘い蜜な時間が待っていると。 【完】