きっと、この夜の闇のせいだ。
それに、自分の仕事を誉めてもらって、私の感情が昂ぶっているせいだろう。
翔平君がこんなに熱がこもった目で私を見つめるなんて、あるわけない。
私は見つめ合う時間を止めるように視線を逸らすと、明るく口を開いた。
「このマンションだから、もういいよ」
右手に見えるマンションを指さすけれど、深夜の街灯はマンション全体を照らすわけでもなく、ほの暗い向こうにぼんやりと浮かんでいるだけだ。
既に日付が変わっている時刻。
部屋の灯りもほとんど消えているせいか、とても寂しげに見える。
「は? これって……」
「このマンションに住んでるの。コンビニにも駅にも近いから、便利でしょ?」
「便利でしょって、お前、このマンションって分譲じゃないのか?」
翔平君は慌てたようにそう言って、私の腕をぐっと掴んだ。
「翔平君、声が大きいよ。もっと小さな声で話さないと近所迷惑だよ」
翔平君は慌てる私にお構いなしに、私の腕を掴んだまま答えを待っている。
そんなに、このマンションに私が住むのはおかしいかな。

