初恋の甘い仕上げ方




そして、翔平君は私の隣りに座り、私の手元にあった印鑑を手に取ると。

「俺の立場や父さんと母さんの仕事への影響を考えているみたいだけど、今結婚しておかないと、もっとややこしくなるぞ。今朝発表されたけど、俺がずっと狙ってた賞を獲ったし」

それって、さっき小椋君がスマートフォンで見せてくれたショッピングモールのロゴだ。

そうか、翔平君はその賞をずっと狙ってたんだ。

狙えば誰もが獲れる賞じゃないのに、やっぱり水上翔平ってすごい。

「それに、去年から売れてる女子中学生向けの文房具も第二弾のデザインを任されたし。きっと、半年後には今以上に忙しいしマスコミに取り上げられる機会も増えてるはずだ。だから、今結婚しておくほうが、萌が心配している根回しやら段取りってやつも簡単なんだ」

「そう、なんだ。でも、私……」

私の隣りの席に、ほとんど横座りのような姿勢で腰掛けている翔平君は、体全体を私に向け、その手を私の椅子の背もたれに置いている。

そして、あまりにも私の顔の近くにその端正な顔が寄せられて。

「うわっ。ファミレス同様水上翔平の甘々な横顔。やっぱり写真撮りたい」

向かいの席で呆然としている小椋君がつぶやいた。

その手がテーブルの上に置かれた彼のスマートフォンにそろりと延びそうになるのを、翔平君の厳しい視線が止めた。

「あ、じょ、冗談です」

翔平君の視線に体を小さくした小椋君は、慌てて両手を横に振り、から笑い。

冗談だなんて言ってごまかしてるけど、きっと本気で写真を撮ろうとしていたはずだ。


椅子の背に体を預けて翔平君との距離をとりながらも、その視線は私に向けられ「なんとかしろよ」と訴えている。