ベージュのコートを脱ぎながら、私の側に歩いてくる。
普段と変わらないジーンズとスニーカーは、翔平君の仕事着らしく、今も仕事の最中なのかもしれない。
「別府さんの奥さんは、『道楽で事務所を経営するほど世の中甘くない。賞金をしっかりもらって普段頑張ってる所員たちに還元しろ』って言って辞退することを許さなかったんだ」
「へ、へえ……」
「あの奥さんがいなかったら別府さんの事務所は成り立たないんだろうな」
翔平君は、おかしそうにそう言って、私の頭をくしゃりと撫でた。
「萌も将来そんな嫁さんになるのか?」
「え?」
「いや、旦那の仕事を後押ししてくれる、できた嫁さんってこと。まあ、少しずつ頑張って欲しいけど、俺が萌の仕事の後押しをしていく機会も増えるのかもな」
優しい瞳を私に向けて、翔平君は何度か頷いた。

