「だから、俺は長い間、萌に会えばいつも。萌から『好きです』って伝えられていたようなものなんだ。萌は、いつも俺に気持ちを隠そうともせず、会えばいつも体中でその思いを見せていたんだ」

「翔平君……」

私は翔平君の胸をそっと押し返して顔を上げた。

そのまま翔平君の顔を見ると、いつもより表情がゆるんでいるように思えた。

「ん? 小学生の頃の可愛い萌を思い出してるんだ。悪いか? あの頃はいつか俺への気持ちは錯覚だと気づいて「おじさん」なんて呼び出すんだろうって思ってたのに、ここまでずっと、萌は俺が好きだったんだよな。すごいよな」

しまりのない顔に自覚があるのか、翔平君は照れたように肩をすくめた。

同時に私の頭をくしゃくしゃ撫でては「萌の気持ちが変わらなくてよかった」とか「いい年した男がこんな小娘に右往左往させられて」なんてぶつぶつ言っている。

長い長い初恋片思い。

翔平君から離れようと頑張ってみたり、別の男性と付き合ってみたりしても、最終的にたどり着く答えはいつも「翔平君しかいらない」だった。

翔平君の言葉を信じれば、隠していたつもりでいたはずの恋心はとっくに知られていて、長い間はしかのような一過性の想いだと思われていた。

それほど私の表情は雄弁だったんだろうかと、今更ながら恥ずかしくなる。

私を見つめながらにこにこ笑っている翔平君を見つめ返し、恥ずかしさいっぱいで笑みを返すと。

「だから、萌が自分の気持ちを俺に伝えずに逃げようとしたっていうのは一部間違ってるだろ? 萌の気持ちはダダ漏れだったし、これでもかってほど伝えられてた。ただ、逃げようとしたってことは、むかつくけど正しいよな」

翔平君の額が私の額と合わさって、不機嫌な声が間近に聞こえる。

「だけど、萌が俺を諦めて就職しようとしてるのを知りながら、それでいいと放っておいた俺が悪いんだよな。萌の気持ちに気付いていながら、逃げ出すまで追いつめた俺が悪いんだ。だから、悩むな。俺が萌の人生を変えて、俺の側から離れられないようにしたんだから」

「だけど」