初恋の甘い仕上げ方






同じ業界にいるのだから、うちの事務所が請け負ったということは知っていてもおかしくないけれど、私がデザインを担当したことまで知っているなんて、おかしい。

その名が知られている翔平君ならともかく、私はまったく無名だし、どんな仕事をしていようが、世間が注目するわけもない。

ましてや公表されているわけでもない。

「……まあ、俺みたいにあらゆる分野で仕事をしていれば、いろんな情報が入ってくるんだよ。萌の事務所はそれほど大きくはないけど質の高い仕事をするって知られているし。注目されてるってことだ」

「へえ。そうなの……」

なんだかすっきりしないけれど、翔平君が立っているポジションなら、大小さまざまな情報が入ってくるのかもしれない。

翔平君自身、努力家でこつこつと勉強する人だから、ほかの事務所の動向にも気を配っているのだろう。

「私、すごく嬉しいんだよね。この仕事が終わって、ようやく今の事務所にいていいんだって思えたし」

「大げさだな」

くすくす笑う翔平君に、私も笑いを返した。

「大げさじゃないよ。大きな利益をあげる仕事をしているわけじゃないのに、ちゃんとお給料をもらってるなんて、居心地が悪かったし。でも、これからも頑張ろうって思った。この仕事をこつこつ続けていこうって、ようやく覚悟したっていうか……」

へへっと、小さな笑いで照れた気持ちをごまかした。

たしかに学生時代、デザインの勉強をしていたけれど、だからといって自分のすべてをかけてこの職に就きたいという強い気持ちはなかった。

それに、学生時代の私は違う企業への就職を希望していた。

今就いている職種とは違う仕事がしたくて就職活動も頑張っていたけれど、結局その企業と私には縁がなかったようだ。

今でもそのことを残念に思う気持ちはあるけれど、だからといって今の仕事が嫌なわけではない。

やりがいもあれば将来への目標もある。