初恋の甘い仕上げ方




翔平君の側から離れられないと、心のどこかでわかっていた。

けれど、翔平君に私の気持ちが受け入れてもらえる自信がなかった私は、長い初恋に囚われて、身動きできずにいた。

小学生のとき以来十年以上を翔平君への片思いに悶えながら過ごし、大学卒業を控え、就職活動を始めた頃。

『三崎紗和、水上夫妻のひとり息子と熱愛』

そんな世間を賑わせる記事が、私の初恋の終わりを促した。

それまでにも何度か、翔平君と三崎さんが一緒にいるところを見たことも後押しとなり、その記事の真偽を本人に尋ねることもなく、私は翔平君を諦めようとした。

大学卒業を機に、翔平君の気配を感じない場所へ逃げようとしていたのだと、今ならわかる。

自動販売機の設計をしたいという夢を持っていたのは確かだけど、それを理由に翔平君から逃げて楽になりたいと思ったのは、自覚のない本心だったと思う。

実家を離れることを両親や兄さんに説明するための手段としてその夢を利用したのかもしれないし、そうでもしなければ、いよいよ結婚すると報じられていた翔平君にすがってしまいそうで、怖かったのだ。

そんな気持ちに気付かないふりをして、翔平君から遠く離れた場所で就職しようとした私のずるさが、あの事故を起こしたのかもしれない。

次々と蘇る当時の想いに私は俯き、翔平君との距離を広げた。

翔平君は、私を膝の上で横抱きしながらも、その距離を詰めることもなく、私をただ見ている。

逃げようとしていたという私の言葉に傷ついて、私を抱き寄せることすらしたくないのだろうか。

「ごめんなさい。翔平君が何度も謝ることはないの。勝手に翔平君を好きになって、思いを返してくれないことに拗ねた私のせいだから。だから、翔平君が私の未来を変えたわけじゃないし、後悔する必要もない。私がちゃんと自分の想いを伝えていれば、翔平君にも違う未来が待っていたはずなのに。私が翔平君に怒るのはおかしいよね」

翔平君が自分を責め続けていることを怒る資格などないと、やっと気付いた。

自分の身勝手さに体を小さくしていると。

「八年だからな」

「え?」

落ち込む私の頭をぐりぐりと撫でながら、からりとした声で、翔平君が私の顔を覗き込んだ。