私の体を緩く抱きしめているのも、私が動きやすいように、そうしているのかもしれない。
私の行動ならお見通しだというようなそんな翔平君のできすぎなところ、普段は気にならないのに今はむかついてばかりだ。
「そりゃ、あの頃やりたかったのは自動販売機の設計だし、今でも未練がないわけじゃない。今日、久和さんから自分の好きな仕事をしなさいって言われたときにもちらりとそのことが浮かんだし、いつかその世界を見てみたいとも思うけど。今はデザインの世界で一旗揚げるって決めてるから、へたに気を遣ったり過去の自分を悔やまないで」
「……ああ」
私を好きだと言い、結婚しようと約束したというのに、翔平君は、いつまで過去にこだわっているのだろうかと、悲しくなる。
翔平君が私を大切にしすぎることには慣れているけれど、私の気持ちを読み違えての気遣いならいらないのだ。
私は翔平君の背中に回していた手を外すと、そっと体を離した。
「翔平君が私の未来を変えたのは事実だけど、それは、幸せな未来に変えてくれたってことだから。結局、私は翔平君から離れることなんてできなかったに違いないし、どんな道を歩んでも、たどりつくのは今のこの場所だと思う。翔平君の側で仕事をしてるに違いないんだから」
どう言っていいのかよくわからないまま、とにかく自分の想いを口にした。
あのときの事故がなくて、私が順調に採用試験を受けて内定をもらい、入社したとしても。
私は翔平君のもとに帰りたくて仕事なんて手につかず、早々に退職して実家に戻っていたに違いない。

