初恋の甘い仕上げ方





そっと翔平君の胸元から体を離し、視線を上げた。

すると、私の疑問を察したのか、翔平君はゆっくりと口を開いた。

「今回の復刻版の最後を飾る商品が桃のジュースだって知らされたとき、萌がピンクのランドセルを背負っていた姿を思い出したんだ。おまけピンクがイメージカラーであるアマザンホテル限定の商品だって聞いて、これはもう、久和さんの思惑通り、絶対萌に参加させたいって思ったんだ」

「ん? どうして? ピンクが好きなベテランの同業者は他にもたくさんいると思うけど?」

たとえ私が昔からずっとピンクにこだわりを持っていたにしても、私より経験豊富なデザイナーは他にたくさんいると思う。

それなのにどうして翔平君が私にこだわるのか理解できない。

私は首をかしげ、翔平君を見つめた。

すると、翔平君はあたりを見回し、近くにあったテーブルの上にあったペンと紙を手にした。

「復刻版の桃のジュースだけど、味は以前のものとは多少変わるけど、名前は昔のまま使うって言っただろ?」

「うん、聞いた」

私が頷くと、翔平君は手にしていたペンで何かを書き始めた。

さらりと書かれたその文字を見た私は。

「あ。私の名前が」

小さく声をあげて驚いた。

テーブルの上の紙と翔平君の顔を交互に見ながら、「も、もも……もも」と何度も口にする私に、翔平君はくすくすと笑う。

「落ち着けよ。覚えてるか? 萌の名前と桃という漢字を並べて『もも』と読むんだ。10年以上前に販売終了して以降も復活を求める声は根強くて、今回のプロジェクトも、その声に応えるためのものだと言ってもおかしくないらしい」

私はテーブルの上にある紙を手に取り、じっと見る。

そこには「萌桃」と書かれていて、その文字の上には「もも」とひらがなで読み方も書いてあった。

「思い出した……。小さな頃、じいちゃんに「萌の桃ジュースだぞ」って教えてもらって、よく飲んでた」

「俺が萌の家に行くようになってしばらくは販売されていたから、白石家の冷蔵庫によく並んでいたな」

「うーん。そうだったっけ」

微かな記憶を手繰り寄せる。