初恋の甘い仕上げ方





膝の間に顔を埋め、何度かため息を吐いていると、翔平君の手が私の頬に触れた。

そして、その手が私の顎の下に差し入れられ、くいっと上に持ち上げた。

「酒のせいでピンクに染まった萌の顔、まるで桃のようだな」

すぐ目の前にある翔平君の顔は、いかにも嬉しそうで目じりも下がっている。

「兄さんと一緒ですぐに顔に出ちゃうんだもん」

「樹もすぐに顔に出るから、学生時代はよくからかわれてたな。だけど、あいつの飲みっぷりは半端じゃない。萌もそうだろ」

「うん。顔が赤くなるわりに、お酒は強いかも。だけど、赤くなるせいで周りからは強く勧められないし助かるんだけどね」

そう言ってから笑いする私に、翔平君は複雑な顔を見せる。

「他人にこの赤くてかわいい顔を見せないで欲しいけど、仕事しているとそれは無理だな」

「ん?」

「いや、この赤くて桃のような萌の顔を見ていたら、あの仕事はやっぱり萌にぴったりだと思ったんだよ」

翔平君は首をかしげる私の隣りに腰をおろし、優しく抱き寄せてくれた。

「アマザンホテルのテーマカラーのピンクは、俺が発案して、ホテル側と話し合って決まったんだ」

「え、あ、そうなんだ」

なんの脈絡もなく出たアマザンホテルの話題に、どう答えていいのかわからない。

翔平君の鎖骨あたりに顔をのせ戸惑っていると、翔平君の口元がほころんでいた。

うれしそうに上がる口角に見惚れていると、秘密を打ち明けるようなもったいぶった声が聞こえた。

「ピンクっていうのは、萌を連想させる色なんだ。萌が小学生の頃、ピンクの服をよく着ていたし、何か買ってやるって言うと、いつもピンクを選んでいただろ?」

「そうだったかな……。ごめん、よく覚えてない」

小学生の頃のことは、覚えているようで覚えていない。

友達と楽しく遊んでいたことや、逆に喧嘩しちゃったことなんかはよく覚えているけれど、当時の私が何を好んでいたのか、よく覚えていない。

唯一、翔平君のことが大好きだったのはよく覚えているけれど、他に強く印象に残っているものはないような気がする。

どこまで私は翔平君のことが大好きだったんだろうかと照れくさくなった。

「あ、でも、ランドセルはピンクだった。おじいちゃんが買ってくれたお気に入り」