腰をおろしたあと、両足を引き寄せて三角座り。
そして膝の上に顎を置いてふうっと息を吐いた。
「久和さんは、萌のデザインを見て売れるって確信したらしい。そしてその勘は正しかっただろ? 生産が間に合わないほどのヒットになったのは萌の力だけじゃないにしても、久和さんがよく口にする『高齢化の進んだ役員会』で萌をプロジェクトに参加させるのを認めさせる後押しにはなった」
「そんなの言い過ぎだよ。あのラベルは気に入ってるけど、売れたのは商品がいい物だからだし」
どこか力強い翔平君の言葉を、私は慌てて遮った。
久和さんも翔平君も私の力を過信しているようで居心地が悪い。
「萌の言うことも間違いじゃないけど、見た目のインパクトってのも大事だし、その面で売り上げに貢献するために俺らの仕事があるわけだから。萌が果たした仕事をもう少し称えてもいいんじゃないか?」
「そりゃ、自分の仕事をバカにしてるわけじゃないけど、私はまだまだ半人前で、修行中のようなものだし」
「その半人前で自信なんてまるでない萌を指名したのは久和さんだ。一緒に仕事をしたなら彼が妥協をすることなんてしないし、一時の思いつきで仕事を進めるひとじゃないってわかってるだろ」
「うん……、それはそうなんだけど」
私は力なくそう呟いて、抱えていた膝を更に強く引き寄せて体を小さく丸めた。
自分の仕事にプライドを持っている翔平君の言いたいことはわかるし、久和さんの仕事へのストイックさや真摯な向き合い方は知っている。
その久和さんが私の仕事ぶりを見て、大きな仕事を任せたいと言ってくれているのなら素直に喜ぶべきだともわかっているけれど、正直、不安なのだ。
これといって特筆すべきものもない、与えられた仕事に真面目に取り組むことでどうにか周囲に認めてもらっているだけの未熟者の私。
あのペットボトルのラベルの仕事だって、売れ行きが良かったおかげで評価されているけれど、そのことだけをきっかけに大きな仕事を任されても困る。
もちろん光栄だけど、とにかく今の私の実力では期待に応えられないと思うのだ。

