「復刻版の最後には、実は桃の新商品が投入されるんだ」
「え? それじゃ復刻版じゃないでしょ」
「ああ、中身もラベルも新しくなって、名前だけ従来のものを使うんだ」
「へえ。そういうのもありなんだね。でも、それじゃ復刻版にはならないような気がするけど」
「たしかに完全な復刻版ではないんだけど、仕方がないんだ。このオレンジジュースだって、まったく同じかと言えば違う。当時原材料のみかんを作っていた農家が廃業していて別の農家にお願いしているし、みかんが違えば味のバランスも変わってくるだろ? 企業秘密だと言って教えてもらえなかったけど、以前の味に近づけるためにいくつかの農家からみかんを集めて甘みや酸味の調整をしたんだそうだ」
「そっか。たしかに販売が終わってから十年以上経つもんね」
復刻版と簡単に言うけれど、やはり一度販売終了した商品を再び世に出すというのは簡単なことではない。
ひとつの商品でさえかなりの労力を要するのにゴールまでの二年間で複数の商品を再販売するなんて、かなりの大仕事だ。
久和さんの会社の社運がかかっているといってもおかしくない。
「桃に関しても同じで、産地を変えなくてはいけない事情があったらしい。味そのものが変わるのならいっそ、新しい味の新商品を出そうと決まって、名前だけは以前使っていたものをそのまま復活させることになったんだ」
翔平君はそこでひと息つき、体を私に近づけた。

