「翔平君……」
一体なんなんだ? と戸惑いながら、翔平君の顔を覗き込んだ。
「あのね、翔平君。わけの分からないことばかり言ってないで、言いたいことをはっきりと言ってよ。遠回しに色々言われても、鈍感な私にはわかりませーん」
落ち込んでいるらしい翔平君の気持ちを盛り上げてみようかと明るい声を出してみたけれど、翔平君に変化はない。
「だけど、普段強気で俺様な翔平君がたまにこうして弱ってる姿を見せるのも、悪くないね。私が側でどうにかしなきゃって、力がみなぎるもん」
私はソファの前にひざまずくと、翔平君の膝に手を置いて、何度かトントンと叩いてみた。
すると、両腕の間から顔を覗かせた翔平君と目が合った。
当然ながら泣いてる様子はなく、単に言いたいことをどう言おうか悩んでいるだけのような気がする。
「言いたくなければ言わなくてもいいよ」
にっこりと笑い頷くと、翔平君もつられて口元だけで笑った。
「言いたくないけど、言うことにしたんだ。ちゃんと聞けよ」
「う、うん」
翔平君が好きだったオレンジジュースが再び発売されるという話から始まったこの流れの終着点はどんなものなのか、いい加減、はっきりと教えて欲しい。
「結論を先に言うけど。自動販売機のデザインを、やってみないか? あ、小椋君が手がける案件とは別で」
……は、どういうこと?
久和さんの会社は飲料水メーカー最大手で、誰もがその名前を知っている。
数ある商品の中には発売二十年以上というロングラン商品も幾つかある。
そして、再来年創立三十周年を迎えるにあたり、記念イベントを予定しているらしい。
新商品の発売はもとより、これまで人気があった商品の復刻版を期間限定で販売するのもそのひとつで、その第一弾が翔平君が手にしていたオレンジジュースだ。
その発売は一か月後で、それを皮切りに、二年後の三十周年まで、過去の人気商品が月に一種類ずつ復刻版として発売されるという。

