初恋の甘い仕上げ方






「悪い悪い。まず、これ。このペットボトルだけど、さっき小椋君が久和さんに聞いていた復刻版の第一弾として販売が決定してる」

「え、本当? 翔平君、大好きだったから嬉しいでしょ」

「まあ、な。懐かしいし、おまけに今回俺がデザインの変更を担当したから尚更だな」

「そっか。話題にもなってるし、さすが水上翔平だね。今日久和さんが私のことをもちあげてくれたけど、私なんてまだまだだね」

「何言ってるんだよ、今日工場で大きな打ち合わせをしてきたばかりだろ。それに久和さんの目はたしかだ。萌は……どんどん俺が今いる場所に近づいてくるさ」

私を励ますでもなく諭すでもなく、とくに感情がこめられていない声音から、それが翔平君の本当の気持ちだとわかる。

「だけど、実力不足だし経験も浅いし、翔平君がいる場所になんて百年かかってもいけないと思う」

拗ねているわけじゃない、冷静にならずとも今の自分の実力はよくわかっている。

若手の同業者の誰もが翔平君に憧れ、目指しているというのに、私がそんな高みにいけるわけがない。

翔平君が本気でそう思っているのなら、それはもう「惚れた欲目」というものに違いなくて、そんなことを考えるあたり、私もかなり図々しくなったみたいだ。

図々しいし、翔平君に愛されているとようやく信じられるようになったのかもと、気持ちの変化を感じていると、相変わらず真面目な顔をした翔平君が話を続ける。

「別府さんが萌のこれからのことは考えてるみたいだけどな。経験を積めば実力はついてくる。それに、百年もかけずに俺に近づくためのいい話があるんだ」

「……何それ」

「今日、小椋くんが久和さんに復刻版の内容を聞いたけど教えてもらえなかっただろ?」

「あ、うん。私も興味があるから残念だったけど」

「関係者以外極秘で進められているんだけど。久和さんの会社が二年後に創立三十周年を迎えるにあたっての大々的なプロジェクトなんだ」

「極秘って……そんな大切なことを私に言ってもいいの?」

「ああ。久和さんには許可をもらってるし、萌には話さないといけない理由があるんだ」

そう言って、翔平君は「はあっ」と息を吐くと、頭を抱えて体を丸めた。

その手を包んでいた私の手は、翔平君の膝の上からするりと落ち、行き場を失くした。