テレビや映画で見る美乃里さんよりも綺麗に見えたのは、彼女の本来の姿を知っているせいだろう。
大人になった今でも、翔平君を愛してやまないお母さんなのだ。
「今ならそれもわかるけどさ、ガキの頃の俺はそんなことわかるわけないし母さんと父さんが仕事で家にいないことに慣れてはいても、やっぱ寂しくて、母さんによくあたっていたんだ。で、運動会のときくらい弁当作って来いって爆発した俺に、母さんがくれたのがこのオレンジジュース。太陽の笑顔を見てふたりで笑って、でも母さんはそのうち泣きだしたんだ。俺にごめんって謝りながら。だけど、運動会の日は撮影でフランスに行かなきゃいけないって言って、大声で泣き続けて」
翔平君はそこでひと息いれるように黙ると、ふっと視線を天井に向けた。
昔を思い出しながら話す翔平君の隣りで、私は「ガキの頃の翔平君」に会いたかったなと思う。
見た目麗しい翔平君がランドセルを背負っていたり、駄々をこねている姿を想像するだけでわくわくしてくる。
その頃の写真が残ってないかな。
翔平君の引っ越しのどさくさに紛れてこっそり探してみようと考えていると、翔平君が私の頭をポンとひとたたき。
「写真なら恐ろしいほどあるぞ」
「え」
「ガキの頃の俺、見たいんだろ?」
「どうして、それが……」
「どれだけ長い間、萌の側にいると思ってるんだ。……父さんと母さんはたまに俺に会うとずっとカメラを手にして俺を撮ってたんだ。会えない間にそれを見て泣いてたってのも最近聞いたけど、本当に俺のことが好きなんだなって、もう、気持ち悪いだろ」
「ふふっ。そう言いながら、翔平君嬉しそうだけどね」
「……うるさい」
私を抱き寄せてその胸に押し付ける翔平君の体温はかなり高い。
照れて真っ赤になっているに違いない顔を見せたくなくて、私の頭をぐりぐりとその胸に押し付けているに違いない。
私は、顔をどうにか動かして、視線だけを上に向けた。
やっぱり、翔平君の顔は赤かった。

