その頃の思い出の象徴でもあるこのオレンジジュースは、翔平君にとっても私にとっても忘れることができない宝物だ。
私が自動販売機の設計をしたいと思ったのも、このオレンジジュースがきっかけともなれば、再びこうして手にすることができて、次第に強くなる興奮を抑えることはできない。
「だけど、どうして翔平君がこのジュースを持ってるの?」
私の隣りで黙ったままオレンジジュースを見ていた翔平君に尋ねた。
たしか何年も前に販売中止になった商品だし、缶からペットボトルに変化している理由もわからない。
すると、翔平君は私の手からオレンジジュースを取り、太陽の絵を見て小さく笑った。
「いつ見てもおかしいよな。俺、このふざけた太陽の笑顔を初めて見たとき、怒っていたのに思わず笑ったんだよな」
「たしかに笑うよね。癒されるっていうか、悩むのもばかばかしいっていうか」
「だろ? 今思えば母さんがそれを狙って俺に渡したんじゃないかと思うんだよな。まだ小学生だったし、単純だったな」
「美乃里さんが?」
「ああ。白石家の冷蔵庫に並んでいたこのオレンジジュースは全部母さんが送っていたんだ」
「そんなこと、全然知らなかった」
「俺が好きなオレンジジュースを冷蔵庫にいつも入れておいてくれって、おばさんにお願いしたらしい。特殊な仕事をしていても、母親としての愛情はかなり強い人だから」
「かなりどころか、びっくりするくらい翔平君を愛してるよね。だけどなかなか会えないから悲しそうな顔をよくしてた……それは今もだけど」
昨夜、美乃里さんが見せた切なげな表情を思い出した。

