初恋の甘い仕上げ方






それを決めたときには、まさかマンションを買うことなんて思いつきもしなかったけれど、今ではそれで良かったと思っている。

賃貸と違って簡単に手放すこともできないし、実家に舞い戻ることもない。

ローンを組んだ以上、しっかりと返済していかなければならないしそのためには一生懸命働かなくてはいけない。

仕事に集中すれば、少しずつでも翔平君を忘れられるかもしれないと期待もした。

だから、ひとり暮らしを始めたことはよかったと思うけれど、マンションを翔平君の家の近くで選んでしまうあたり、私の決意はその程度のものだったのかと実感する。

今こうして翔平君を振り切ることなく家に向かっていることを考えてもそれは明らかだ。

弱い自分が嫌になる。

コンビニを出てからほんの数分の曲がり角で立ち止まると、隣りの翔平君も一緒に立ち止まった。

すると、それまで不機嫌な表情をしていた翔平君の顔が緩んでいることに気づいた。

じっと何かを見つめている。

私の背後に向けているその視線をたどると、街灯があるとはいえ暗い夜道の中、眩しいほどの明るさを放っている自動販売機があった。

コーヒーや飲料水、ジュースなどがその明るさの中で目立っている。

「翔平君?」

自動販売機をじっと見ている翔平君に声をかけると、ニヤリという声が聞こえそうなほどの大きな笑顔を私に向けてくれた。

「萌、頑張ったな」