「それだけ三崎紗和さんに興味があるなら、彼女が出演する映画の担当にしてやるぞ。半年間フランスに滞在しながらの撮影だ。うちがスポンサーとして映画の製作に携わっているのは知ってるな? 撮影中はもちろん、公開までの宣伝活動も含め、三崎紗和さんの担当として派遣するメンバーを選んでいたんだが。……斉藤を候補の筆頭に考えておくよ」
「く、久和部長」
「斉藤の人当たりのよさは海外でも通じるだろうし、三崎紗和さんに興味があるなら海外での生活も苦じゃないだろう」
「……勘弁してくださいよ。僕が来月結婚することご存知でしょう? 久和部長に乾杯の音頭もお願いして……」
「それなら奥さんを一緒に連れて行けばいいだろう」
それまでの楽しげな顔から一転、今にも泣きだしそうな顔で身を乗り出した斉藤さん。
そうか、斉藤さんは来月結婚するんだ。
だとしたら、久和さんが今言ったように海外での仕事は大変かもしれない。
でも、三崎紗和さんのことを何度も口にするほど彼女のファンだったら、半年くらいあっという間に過ぎるだろうし、二度と経験することのない思い出になると思うけど。
斉藤さんはいまひとつ乗り気ではないようで、久和さんに何やら言っている。
けれど、久和さんは苦笑しながらも首を横に振り「最終決定は俺じゃない。常務だから」と言って取り合わない。
すると、それまでその会話に見向きもしなかった翔平君が食事を終え、箸を置いた。
「紗和はモデル体型を維持するために海外でもなるべく日本食を食べるんだ。もし斉藤くんが同行するなら差し入れに海苔と梅干。それと、貧血気味だからひじきをたくさん用意すれば彼女は喜ぶと思う」
「え……?」
翔平君の言葉にどきりとした私は、ちょうど食べようとしていたブロッコリーを箸から落としてしまった。
運よくお皿の上にころりと落ちたことにほっとしながらも、跳ね続ける鼓動を感じたまま俯く。

