ハンバーグに夢中なだけなのか、それとも三崎さんのことを話したくないのか。
ただでさえさっきの打ち合わせで限定ラベルのペットボトルのCMに三崎紗和さんが起用されたと聞いて驚いたばかりなのに。
こうして何度もその名前を聞かされるのは少し切ない。
何度か偶然目にしたことがある、翔平君と彼女が寄り添っていた姿を思い出せば、ずん、と胸の中が重くなるし。
何度思い返しても、大人の愛情が感じられる、絵になる姿だった。
気持ちが高揚した恋愛の始まりを通り過ぎた、お互いの気持ちをわかりあい、尊重しながらの静かな愛情。
翔平君と三崎紗和さんの間のそんな空気を、大学生だった私は何度か目にした。
モデルとしてのキャリアを重ね、女優の仕事にも活動の場を広げ始めたころの三崎紗和さんは、とても輝いていたようにも思う。
「そっか……翔平君、三崎紗和さんと会ったんだ」
ふと口を突いて出た言葉に、隣の翔平君が反応し視線を私に向けた。
その様子を視界の隅に感じて、はっとする。
声にするつもりはなかったのに、私は思った以上にショックを受けたのかもしれない。
ここ数年、翔平君が彼女と一緒にいる姿は目にしなかったし、マスコミがふたりの交際を報じる機会もほとんどなかった。
だからふたりの縁は途切れたのかと思って忘れていたのに。
彼女の名前を何度か聞いただけで、翔平君を諦めようとしながらもそれができなかった頃を思い出して切なくなった。
すると、その場の雰囲気を変えるように、久和さんの声が響いた。
「斉藤。海外に長期出張の話をすすめてもいいのか?」
相変わらず低い声に、その場のみんなが一斉に顔を向けた。

