思えば、あのスーツ姿が私の恋心を一気に開花させたのだろうと、今ならわかる。
ようやく小学校を卒業する、親友の妹。
翔平君がひとりっ子だったことも私をかわいがってくれた理由のひとつだろうし、本当の兄のようになつかれて、情も生まれた違いない。
それでも、私をひとりの女性として大切にしてくれたことはなかったとわかっている。
いつも私を心配するか叱りつけるか、あるいはおだてるように誉めていい気分にさせるだけ。
おまけに、これ以上翔平君の側にはいられないとなれば、そのつらさも恋心もすべて断ち切るしかない。
けれど、長い間私の一部となっていた想いを簡単に断ち切るなんてできなくて、どうしようもない。
これまで、たったひとりだけど翔平君以外の男性と付き合ってこの想いを昇華させようとしたことはある。
けれど、結局最後には翔平君への想いが邪魔をし、別れは必至。
それでも自分なりに努力して、叶わぬ恋心を捨てようと努力はした。
だけど、兄さんが家にいてもいなくても訪ねてきては我が家で一緒に夕食を食べたり、誕生日には必ずプレゼントを用意してくれたり。
私が翔平君を忘れようと努力する以上にその存在を感じてしまえば、それはすべて水の泡というものだ。
そして、これではいけないと決意した私は、自分の気持ちを強行突破させることにした。
それが、実家を出るということだった。

