聞いてはいけないことを小椋君は聞いたのだろうかと不安になったとき、久和さんがミックスサンドをちょうど食べ終えコーヒーを飲みながら、私と小椋君に向かって口を開いた。
「復刻版として発売する商品のラインナップは決まっているんですけど、それが何か、そしてそれをどう販売するかやデザインは教えられないんですよ。焦らして申しわけありませんが、もうしばらくお待ちください」
柔らかで、どこにもとがった部分を感じない口調だとはいえ、それ以上は何も教えてもらえないと感じた私と小椋君は、思わず頷いた。
できることなら第一弾の商品に一体何をもってくるのか、そのあたりは教えて欲しいなと思うけれど、久和さんの声がそれを許さない。
「お待ちください」と言って何度かまばたきをするその数秒で、これ以上は何も話せませんと言外に伝えられた気がした。
そして、笑顔の下にある意志の強さを感じ、仕事をすすめるというのはこういうことなのだと、諭された。
それでも、単なる好奇心はやはり生まれるもので。
小さな頃大好きだったジュースをいくつか頭に思い浮かべ、それらの中からも復刻商品が生まれればいいなと思い浮かべつつ。
「商品のヒントだけでも……えっと、無理なんですよね」
私の言葉にも、無言で答えを返す久和さんに、それ以上何も聞くことはできなかった。
「……わかりました。復刻版が発売されるのをそわそわしながら待ってます」
ため息まじりの私の言葉を聞いた久和さんは、「申し訳ないですね」と言ってそのまま視線を翔平君に動かした。
なにか思うところがあるのか、目を細めたその様子からは翔平君に何かを伝えているようなものが感じられるけれど、翔平君はその視線をさらりとかわし、食事を続けている。
もしかしたら、復刻版のプロジェクトには、翔平君が参加しているのかもしれない。
きっと久和さんの会社でもかなりの力を注いでいるものだろうし、翔平君に声がかかるのも簡単に想像できる。
それに気づけば尚更、その詳細が知りたくてたまらない。
だけど、久和さんも翔平君も口が堅そうだし、情報解禁の日まで待つしかないのだろう。

