同じ業界で働いているのだから、久和さんが翔平君とも仕事をしたことがあるのは当然だけど、こうして一緒に食事をするなんて、思いもしなかった。
私の両隣には翔平君と小椋君が座り、向かいの席には久和さんと部下の男性ふたりが席についている。
工場を出たあと私と小椋君の会話を聞いた久和さんは、『翔平君』というのが水上翔平だと察したらしい。
仕事ができるひとは、どうしてこんなに勘がいいのだろうかと驚いた。
話を聞けば、これまで何度か久和さんの会社の商品のデザインを翔平君が担当したことがあるらしく、ふたりの間にはかなりの信頼関係があるようだ。
翔平君のデザイン力によるものか、久和さんの宣伝力によるものなのか、ふたりが組んだ商品はどれも売れ行きが良く、久和さんの会社では翔平君のスケジュールを抑えるための担当がいるとも言っていたけれど。
翔平君は、「久和さんはかいかぶり過ぎですよ。売れなくて僕ひとりが満足した商品もかなりあるし」と苦笑していた。
そんな翔平君や、部下の人たちにも優しい笑顔で頷いている久和さんから、やり手の宣伝マンという雰囲気は感じられないけれど、翔平君が何度も「久和さんに頼まれたら断れない」と口にすることからも、それは間違いないのだろうと思った。
そして、デザイナーとしてその実力を認められ、輝かしい実績を持っている翔平君が一目置いている久和さんと、まだまだ駆け出しの私が一緒に仕事をさせてもらえることはかなり幸運なことだと実感する。
「最近まで、まさか水上さんと白石さんがお知り合いだとは知りませんでした」
翔平君と私を見ながら、久和さんが驚きながらそう言った。
「はい、兄としょう……水上さんが高校の同級生で、二十年近くの知り合いなんです」
「そうですか、同じ業界でお仕事をされるなんて、よっぽど縁があるんですね」
「同じ業界といっても、私はまだまだ修行中で水上さんの足元にも及ばなくて……」
久和さんの言葉に、私は目の前で手を振り慌てて否定する。

