「えっと、その。帰りも送ってもらえるから、大丈夫で……。それに、ファミレスも……」
「は? 送ってもらえるって、水上……さん?」
「うん。そうだけど、どうして知ってるの? 今朝誰に送ってもらったか言ったっけ?」
「……朝早くからわざわざ送ってくれるなんて、シスコン丸出しのお兄さんか、白石が大好きな翔平君しか考えられないだろ」
「シスコンって、まあ、当たってるけど」
呆れたような口ぶりで話す小椋君の言葉に、私もくすくす笑った。
小椋君とは小学生の頃からの付き合いであり、実家同士もご近所ともなれば、家族同士の交流もある。
兄さんの私に対する過保護ぶりも小椋君はよく知っていて、ことあるごとにからかわれている。
「で、今朝はシスコン? それともリボンの王子様?」
そのふたつの可能性しかないとでもいうような強い声で選択肢を示す小椋君。
私はぶっきらぼうなその声に照れながら俯いた。
「黙り込むってことは、リボンのほうだな。今まで白石を放置していた時間を取り戻したくて必死だな」
「必死って、それは翔平君じゃなくて私のほうだし。ようやく、一緒にいられるようになったけど、まだ夢みたいで現実感もないような気がするし」
「翔平君翔平君って、相変わらずだな。ほんと、一途というかしつこいというか」
「しつこいなんて、結構失礼だよ」
小椋君の言葉に大きく反応した私は、思わず強い声で言い返した。
たしかに自分でも、翔平君をしつこく想い続けている自覚はあったけど、どうしても諦められなかったのだから、仕方がない。
きっぱりと諦めるきっかけも、それを強行する勇気もなかったこれまでのあまりにも長い時間。
もしかしたら翔平君も私のことをしつこいって思っていたかもしれないなと、ほんの少し落ち込んだ。
「いまさら何落ち込んでるんだよ。……昨日から落ち込んでるのは俺だっていうのに」
「え? なに、聞こえないけど」
「なんでもない。白石のしつこいくらいの情熱が、俺にも欲しいなって思っただけ。翔平君も、それだけ一途に思われて幸せ者だよな」
「……棒読みで言わないでよ」
「ははっ。悪い悪い」

