第七章



その日の打ち合わせは思っていた以上に順調に進んだ。

新商品というわけでもなく、季節限定もののラベルのデザインということで、キャラクターや方向性がある程度決められていることが大きい。

イメージカラーは淡いピンクと決まり、前回と同じ少女の笑顔がペットボトルを飾る。

これまで私が描いたデザインの中でもとくにお気に入りの少女の笑顔と再び関わることができて、嬉しくもある。

今日はお願いしていたラベルの試作品ができあがり、早速工場に出向いて私と小椋君とで確認をしている。

飲料水メーカーの担当者も数人混じり、色味や文字の配置などのバランスの調整を行った。

前回、私がデザインしたものが好評だったこともあり、今回はそれなりのプレッシャーを感じていたけれど、メーカーの担当さんからの評価も上々で、ほっと胸をなでおろした。

現在、工場はフル稼働で動くほど忙しく、担当さんの予定がまだまだつまっているということもあり、集中した打ち合わせは、やけに心地よかった。

これまでは先輩のサポート的な立場で打ち合わせに臨んでいたけれど、主担当ともなれば、実務の厳しさだけでなく、心づもりも全く違う。

多少なりとも経験を重ねたせいで欲も出る。

自分が手掛けた仕事が世の中に知られる喜びも知っていく。

打ち合わせで厳しい意見をぶつけられることがあるとしても、この高揚感は気持ちのいいものだ。

どんなに忙しくても、そしてプライベートを犠牲にしても、依頼される仕事はなるべく引き受けると言っていた翔平君の言葉の意味をようやく理解できたような気がした。

仕事に打ち込み成果を上げることが、これほど心地よいものだと知ることができたのだ。

五年近くかかって、ようやく翔平君と同じ職業に就いたと思えた。