翔平君のことを考えただけで恥ずかしくなるし、気のせいではなく、顔が熱くてたまらない。
私をじっと見つめる小椋君の視線を避けるように、ちょうど手元にあったファイルをぺらぺらとめくった。
「えっと、とりあえず、明日は電車で行くから、最寄駅で拾ってくれる? 駅から遠いからそうしてくれると助かるし」
「だから家まで迎えに行くって言ってるだろ?」
「それはいいよ。私、今日実家に顔を出すことになっててそのまま泊まるかもわかんないんだ。だから、電車で行くほうが気楽だし」
へへっと笑いながらも、この話はこれで終わりだというようにちょっとだけ強い口調でそう言えば。
「……わかったよ。じゃ、向こうの駅で九時半に待ってるから遅れずに来いよ」
渋々ながらも頷いてくれた。
口元をきゅっと結んだ表情は小学生の頃と変わらなくて、いたずらが大好きな少年のままだ。
入学式で隣りの席に座り、落ち着かないまま校長先生の話を聞いていた私たちの緊張感もよく覚えている。
あの頃は私のほうが背が高かったから、小椋君はそれを気にしてやたらと突っかかってきたっけ。
勉強も運動も、何もかも小椋君のほうが優れていて、私は何ひとつ敵わなくて悔しい思いをしていたけれど、唯一身長だけが彼よりも高かった。
小学生の平均身長を考えれば、女の子の背が高いことはおかしくないけれど、単純な子ども時代、小椋君にとってそれは最重要項目だったようで、給食の牛乳は友達の分まで飲んでいたし、『寝る子は育つ』と言って、毎日早く寝ていたらしい。
早い時間に寝るために勉強も習い事も集中して済ませ、週末には野球チームでの練習や試合に没頭していた小椋君が初恋の相手だと振り返る同級生の女の子は多い。
おまけに成績は抜群で、性別問わず人気のあった小椋君は小学校を卒業するときには私よりも背が高くなっていた。
『白石の頭のてっぺんが見える』
そう言って卒業証書が入った筒でポンと私の頭を叩いたときの笑顔は今でもよく覚えている。

