お姫様になりたくて


「…千。そなたももう16であろう。」


「…はい…」


「それならば、髪を揃えなければならないな…」


そういうと、お付きの人が、髪の毛の道具を出してきた。


「…??…」


私がよく分からず、お千代の方をみると、お千代が微笑んで頷いている。

なんだか分からないけど、受けて良いみたい…
それだけは、分かった。


秀頼様は私を座らせ、顔の横の髪の毛をゆっくりと揃えだした。


男性に髪の毛を整えてもらうなんて
始めてで、ドキドキしてしまう…

しかも、それが秀頼様だなんてー!

秀頼様って、手が大きくてキレイ…
髪の毛にふれるたび、秀頼様の手が、
私の頬に当たるのではないかと思い、緊張してしまう。


「…千、終わったぞ。」


「…えっ!…はい。ありがとうございます…」


もう、終わっちゃったんだ…
秀頼様との時間も終わりか…

そんな私の残念なそうな表情を読みとってくださったのか、秀頼様が言葉をかけてくれた。


「千…、また、こちらにすぐ参る…
今日はゆっくり休め。あちらで刑部卿局が待っておる…行ってやってくれ…。」


部屋の方をみると、刑部卿局がこちらを見て立っている。


「…分かりました。今日はもう休みます。
…秀頼様、ありがとうございます…」


「・・・」
秀頼様が優しく微笑んでくれた。


私は秀頼様に一礼をして、東屋をあとにして、部屋へ戻った。