近くて、遠い。



「え、知り合い?」

柚月が隣で机に頬杖付きながら私を見た。
彼は相変わらず冷静な瞳で私を見ている。

「知り合いってほどじゃないよ。歩いてたらぶつかって、それだけ。」

彼はそう言うと、頬杖をついてため息を付いた。

「座れば?」
「…あ、うん。」

彼の冷静さにこっちまで冷静になって、私は椅子に座り直した。
柚月が面白そうに私達を見ている。

「転校生だよ、佐伯くんっていうの、佐伯真弘くん。」
「真弘…?」

開いた口が塞がらないとはこういうことだろう。
私は心底アホみたいな顔をしてると思う。
ポカーンと口を開けて、彼、佐伯真弘くんを見つめた。

「いきなり呼び捨て?」

彼が少し笑った気がした。


――『名前は真弘(マヒロ)って言って、愛想ないけど、いいやつだよ。』

佑樹の言葉が頭のなかでぐるぐる回った。
まさか、この人が私の彼氏の弟…。

同じクラスだとは思わなかった。
しかも後ろの席で…。

「さ、佐伯くん、ごめん。」

慌ててそう言うと、彼は笑いながら言う。
「真弘でいいよ。」
「桜田加子です…、真弘くん?」
「よろしく、加子。」

いきなり呼び捨てにされて思わず固まった。

前見た時から思ってたけど、すごい大人っぽい。
背も高かった記憶があるけど、顔もすごく大人っぽい。
うちの高校の制服は昔から変わらず学ランとセーラー。
セーラー服がかわいい!って理由で選ぶ女の子も多いとか。

学ラン似合うな。
なんていうか、彼がほんとに佑樹の弟だったら、アメリカにいたはずだけど。
The,日本男子。
いやそこまで和風な感じはしないけど。黒髪とすごく似合うと思った。