近くて、遠い。




教室に入ると、担任はHRを終え職員室に帰っていた。
一限目が始まる前とHRが終わったほんの少しの間の時間に入ってこれたみたいで、運が良かった。

窓際の後ろから2番目。
一番後ろの席の人を通りすぎて席につく。

「もー加子、遅いよ。でも運よかったね。」
「ばーかなんてメールしといてよくいうよね。」

親友の荒田柚月(アラタユヅキ)が席についた私の横の席で笑った。

席替えのクジを引いたときは割とラッキーだとおもった。
柚月は隣だし、後ろのほうだし、窓際だし。
おまけに後ろは空席だったし、のんびりと…。

あれ…。
私の後ろは確か空席だったはず…。

さっきなんとなく通り過ぎたけど、今後ろの席に誰かいたような。
いやいたような、じゃなくて確実に誰か座っていた。

後ろを振り返る。
後ろの席に座っていたのは男子で、目が合う。

「あれ?」

そんな声がした。


彼はあの日、一週間くらい前に私が街でぶつかってしまった…。

さらさらしてそうな黒髪。
大きめの二重な目は少し色素が薄い茶色。
スッと通った鼻筋に、桜色の薄い唇…。

彼だ…。


「あ、あのときの…!」

思わず勢い良く立ち上がった。
彼の机にバン!と手をついてしまったのも後悔してる。


彼は冷静に私を見た。