秋とは言え夜は冷える。
カーディガンの袖に手を引っ込めて繁華街を歩いて行く。
正直なところ、最近の彼には飽き飽きしていた。
あう度に「泊まっていく?」しか言わない。
前はよく遊びに連れて行ってくれたし、ご飯も一緒に食べに行ったのに。
感傷的になるのはよくあることだけど、ここ最近その頻度が多い。
街ですれ違うカップルが憎らしく思える。
月日がたっても変わらないものってないんだろうかと思いつつ、スマホを取り出した。
佑樹からメッセージが届いていた。
《気をつけて帰れよ》
絵文字一つ無いそっけないメール。
都会の狭っ苦しい空を見上げれば、私の心みたいに雲がかかっている。
――ドンッ
「きゃっ…。」
ボーっと歩いていたら肩になにかぶつかる。
それが人だと気がつくのに時間は必要なかったと思う。
「あ、すいません。」
そんな声がして、顔を上げる。
目線をあげる、あげる。
目があう。
背が高い、黒髪の男の人が立っていた。
美人だ。
スッと通った鼻筋、薄い唇、そして二重で少し大きめな茶色い目。
少し長めの前髪が彼のまつげにかかりそうだ。
「ねぇ…大丈夫?」
そんな声がしてハッとする。
つい見惚れてしまった。
それくらい彼は美人で、かっこよくて…。
でもどこか不思議な印象だ。
「ご、ごめんなさい…。」
「俺も前見てなかったから。怪我でもした?」
「いや…大丈夫です。」
そっけない物言いがまた、不思議な雰囲気を醸し出す。
「そう。じゃ、気をつけて。」
そう言うと、彼は人混みの中に消えていってしまった。
――誰かに似ている気がしなくもない。
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