「弟も加子(カコ)と同じ高校に転入することになったんだ。」


唐突に。
彼氏が私の頭を撫でながら言った。


彼の部屋の二人がけのソファに座る、彼氏の佑樹(ユウキ)と私。
彼は私の肩に手を置いて、私を引き寄せた。

「日本は久しぶりなはずだし、いろいろ教えてやってよ。名前は真弘(マヒロ)って言って、愛想ないけど、いいやつだよ。」

「へぇ。わかった。」

彼の目は見ずに返事をする。
都内のマンションに一人暮らしをしている3つ年上の大学2年生。
佑樹の家族はみんな、彼の父親の仕事の関係でアメリカに住んでいるらしい。が、弟が日本に帰ってくるらしく、偶然にも私と同じ高校に入学するらしい。

はたして偶然なのだろうか。
知り合いがいるほうがいいとか考えてたんじゃなかろうかと思った。

でも彼の弟はどんな人だろう。
そんな好奇心が私の胸の中に渦巻いた。


「なぁ、今日泊まってく?」

佑樹の手が私の制服のスカートの中にするりと入って内腿をなでた。
私はすかさず立ち上がり、ソファの横においてあったチョコレート色のスクールバッグを手に持つ。


「いい。明日学校だし。またね、佑樹。」

「あ、おい 加子!」


彼を無視して玄関に向かう。
脱ぎ捨ててあるローファーに足を突っ込んで、不用心にも鍵のかかってない扉をあけた。

「ばいばい。」

そうつぶやいて、部屋を出ると、扉はパタリとそのまましまった。