朝、軽快な着信音が携帯から聞こえてきて目が覚めた。
まだ寝ていたい気分なのに鳴り止まない着信音に半ばやけくそで通話ボタンを押した。
「……もしもし…。」
『おはよ。』
スピーカーから聞こえてきたのは電話特有の少しノイズ混じりな真弘くんの声だった。
私は慌てて体を起こした。
『あんた今日暇?』
彼は淡々と話を進める。私は、短く「うん」と返す。
『11時に駅前の書店で待ってる。』
私の「え?」が向こうに届く前に電話は切れた。
プー、プー、と一定のリズムを刻む切断後の電話口から響く音がやけにうるさい気がした。
時計を見ると9時半。
急いで用意しないと間に合わないと携帯を置いて洗面所に向かった。
なんだかスキップでもしたい気分で。
――駅前について書店の前をうろついていた。
スカートとかワンピースを着てくればよかっただろうかなんて自分の格好を見てちょっと後悔する。
濃いワインレッドのシャツにビジューのたくさんついた付け襟を合わせて、下は黒のハイウェストパンツを履いてきた。
ぱっと見デートみたいな格好をしてくるつもりだったけど、気合入れ過ぎとか思われてもイヤだし。
お店のガラスに反射する自分をみて前髪をなおした。
真弘くんは多分もう本を見ているだろう。
なんだか今更だけど緊張してきて、お店の中に入れないでいる。
緩く巻いてある髪をくるくるといじった。
そもそもなんで真弘くんは私を呼んだのだろう。
考えれば考えるほど時間は過ぎていって、約束の時間を20分も過ぎていた。

