真実の愛のカケラ

それぞれが口に運ぶ緊張の一瞬。
ちらっと拓哉を見ると、小さく頷いた。


あとは会長の反応を待つだけ。
そうなんだけど、会長に美味しくないと言われればそれまで。
会長が本当はどう思ったかなんて関係なく、そこで全てが終了する。


それを避けるためには、会長が考える間もなく美味しいと反応をさせるような味を出すべきなんだけど、わかってる。
何度だって食べてきたものだし、今回の味見だってした。
私が一番わかってる。
この料理が、そういう味じゃないことを。
どこにでもある家庭の味だ。


希望は見せてもらえた。
だけど、もう…。


静かに会長の言葉を待つ。
1秒1秒がとてつもなく長い。
酸素が脳にたどり着かない。
…苦しい。


もうあと少しで運命が決まる。


「…お父様?」
「父さん?」


張りつめた糸がふと緩んだ。
社長と拓哉のお母さんの声につられて私も目線を上げる。


「…、祖父さんが…」


…泣いてる?