「え...」

彼女は目をパチクリさせている。

肩の少し下まである綺麗な黒髪を春の優しい風がそっと撫でる。

そのたびに俺の鼓動は速さを増す。

この感情が何なのか俺は痛いほどわかる。



「あの...膝...」


見ると、膝には怪我。
血がたくさん出ていてとても痛そうだ。


絆創膏とかそんな、女子力高いもんもってないし。

そう思ってカバンの中からハンカチを探す。


抑えときゃ、少しはマシだろ。


「あ、ありがとうございます...」


彼女は照れくさそうに微笑んだ。


「い、いえいえ、気をつけて」


よく見たら彼女は同じ高校の制服を着ていた。
新入生か...?

俺より身長が高いせいか、先輩に見える。


見れば見るほど高鳴る心臓の音を抑えるように俺はその場から去った。