懲りもせず、恋する私

一晩中泣いた。
携帯も着拒にし、
腫れた瞼をタオルで冷やし、
コンシーラーで誤魔化して
会社に出勤した。

課に入ると、
翼は、外回りと言う部下の男性社員。

どこか私は…ホッとしていた。
今は、出来れば会いたくない。

会えば、きっと…。
切なくて、苦しくて、
泣いてしまいそうだから。

無言で仕事をして、
お昼も、
恭子の誘いを断り、
コーヒーで誤魔化した。

夕方になり、課内が騒めく。

「佐伯さん、聞きました?藤倉課長
百貨店のお嬢さんと結婚話し出てるらしいですよ。凄いですよね。」

「そう…。凄いね。」
「佐伯さん。反応悪ー。」
「ごめん。忙しいの」
仕方ないよね。
自分に言い聞かせた。

つぐみに電話しても
繋がらない。
メールもエラーで返ってくる。
外回りでなかなか会えない毎日で
今日は、
早目に切り上げ、
社に戻った。

そんな俺に、
「課長!みずくさいですよ。結婚話し出てるらしいですね。あの有名な百貨店の
お嬢さんと」
「はぁ?なんだよそれ!知らねえよ」
「会社中、その話題で凄いですよ?」

俺は、思った。
つぐみに何かあったんだと。

急いで、
課内に戻った。
しかし、
「佐伯さんは?」
「佐伯さんは、体調悪いって、早退していきましたよ。」
報告書をまとめ、
「安田!悪いが、これまとめて、
販売の板野に渡してくれ!俺は、
帰る」
「わかりました。」