静まり返る部屋の中、コポコポと湯呑みにお茶を注ぐ音だけが響く。


「………」

異様な雰囲気に、愛梨は若干震えながら「…どうぞ」と里美の前にお茶を置いた。



「ときに…」


「ひぃっ!」


いきなり里美が口を開き、愛梨は思わずお茶を溢す。



「どこの茶だ?」


「京都は宇治。最高級のお茶ですよ。」



棗がにっこりと微笑みながら答える。



「京都…わりとしっかりとした銘柄使ってんだな。」


「京都人の舌は、これやないと満足せぇへんのですぅ。」



「…お前京都出身なのか。…そういや、2年に場違いな京言葉話す奴がいる…って」



「あっは!うちって有名人やねんなぁ!」


嬉しいわぁ、と棗は笑う。しかし目は全く笑っていなかった。



「へぇ~美味しいじゃん!やっぱ京都っていいなぁ。ね、今度お昼の放送で京都のお茶の紹介していい?」


放送部部長 御崎が明るく志暢に笑いかけた。



まるでこの二人は正反対だな、と愛梨は思った。



「あぁ、いつも放送で音痴な歌を晒して校内の笑い者になっている御崎先輩別に良いですよ。」


「長いわ!そして酷い!」


先輩に対してそれは流石に失礼だろう、とべしっと志暢の肩を愛梨は叩いた。




「…お、音痴?マジ?みんなそう思ってたの?」



「大丈夫ですよ御崎先輩!ジャ〇アンよりかはマシです。」


「それフォローになってねぇ。」



お前も大概じゃねえか、と志暢は軽くデコピンした。




元ヤンだからといって、あまり怖くはない。どうやら先入観の塊だったらしい。普通に明るくて面白い先輩たちだと、愛梨が小さく安堵したくらいだ。


その安堵が吉と出るか、凶と出るか。


「それでなんだが。お前たち改生会に一つ、頼みごとをしたい。」



「一回三万円だが利用なさるか?」



「高ぇよ。つーか部活動で金取んな。」


「あんたの価値は三万円だ、とかそういう意味のアレです。」


「良かったじゃん里美!前にゲームで『あなたの価値はあんぱんの上のゴマと同じくらいです』って出たとき、キレて破壊してたもんね」


里美にギロリと睨まれるが御崎は一切動揺せず、ポンポンと宥めるように肩を叩く。




里美はフンッと鼻を鳴らした。

「まぁいい…それで依頼の内容だが」


ピラッと一枚の写真を取りだし、言った。


「若洲鹿組の暴動を阻止してほしい。」